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グロースカルチャークラブ

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L. 飯田由美子のコラム

今日のぶぶ漬け

 

 その出逢いは、今から3年ほど前のこと…。忙しい日が続いたせいなのか、当時の私は、何よりも大好きな『食べることへの欲求』がなくってしまっていました。そんな時、久しぶりに実家に帰ると、見慣れぬものがなにやら一つ、テーブルの上に。長さ15 ㎝ほど、 白い袋には「お茶漬けいわし 鈍刀煮」との文字が。京都に詳しい皆様なら、もちろん読めますね。

 でも、当時の私は何と呼んでよいのかわからず 、 、 、心の中で『 どんかたなに!?』とつぶやいた。ことを今でも覚えています。

 ということで『今日のぶぶ漬け』は、 押小路新町にある「京の六味」さんの名物『鈍刀煮』とかいて『どんとうに』をご紹介しましょう。私、飯田由美子が大好きな京都で見つけたお茶漬の友をご紹介するコラム『今日のぶぶ漬け』で御座います 。

 『どんかたなに!?』心の中で読み上げたその名前に、まったくもってしっくりいかない感覚に襲われたことを覚えています。とはいえ、お茶漬けが大好物の私は、袋に書かれたお茶漬けと言う文字を見たことで、久しぶりにお腹がすき出しました。恐る恐る袋を切り裂くと、中からお菓子でいうところの「黒棒」によく似た黒い墨のような色のいわしが一匹。いいえ、もはやそれはイワシの姿には程遠いモノ。それをお皿にとってほぐしひとかけらを口に運ぶや、なるほど!すぐにジャーに残っていたご飯を茶碗に軽くよそい、手近にあった一保堂のほうじ茶を入れ準備完了!ボロボロと細くなった黒いかけらを白ご飯の上に少しだけ載せて、あつあつのほうじ茶をかけたとたん、何とも言われぬ良き香りが立ち上がったのです。

 その香りにそそられて、ささっと一口頂くと、思わず目をつぶって美味しさに唸る時間です。飲みなれたはずの、ほうじ茶が鈍刀煮と一つになると、なんと絶妙な美味しさを醸し出すことか。それからというもの、もうちょっとご飯が頂きたいときのお茶漬けのレパートリーに加わったのは、言うまでもありません。それが、私の『どんかたなに』改め『どんとうに』との出逢いでした。

 そもそも鈍刀煮とは、慶応年間、旅する武士の非常食として、旅篭で鰯を炊き上げたものが錆びた刀に似ていたことからこれを「鈍刀煮」(どんとうに)と呼ぶようになったのが始まりで、武士はそれを印籠に入れて携えたことから「印籠煮」とも言われておりました。武士の命を守ったこの鈍刀煮を、保存料・着色料等一切添加せず当時のままの形で再現したのが押小路新町にある「京の六味」さん。

 京都伝統お茶漬けいわし 鈍刀煮 皆さんも、ご興味あれば是非お試し下さい。

                          飯田由美子

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